残業代請求の弁護士コラム

非常勤講師に残業代はでる? 労働基準法の規定と非常勤でも残業代が支給された事例

2021年08月03日
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非常勤講師に残業代はでる? 労働基準法の規定と非常勤でも残業代が支給された事例

非常勤で働いている人の中には、労働時間に見合う残業代が支払われていなくても、「非常勤だから仕方がない」などと諦めている人がいるかもしれません。

しかし、「非常勤だから残業代はもらえない」というのは間違いです。労働基準法の労働時間に関する規定は、雇用形態に関係なく適用されます。

たとえば学校や塾の非常勤講師でも、労働時間に応じた残業代を請求する権利があります。実際に、令和2年11月には、名古屋市教育委員会が市立中学校で働く非常勤講師に対し、未払いとなっていた残業代を支払うことを決めた事例が注目を集めました。

本コラムでは、非常勤で働く労働者が残業代を請求できる場合とできない場合、非常勤講師に残業代が支払われた事例など、非常勤労働者の残業代について解説します。

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1、常勤と非常勤とは?

「常勤」「非常勤」とは、一般に勤務形態を指します。
これは、官公庁や財団法人、学校法人や公立の小学校・中学校・高校・大学などが職員の雇用を区別する際に用いることが多い言葉です。

「常勤」「非常勤」については、労働基準法や労働契約法で明確な定義があるわけではありません
そのため、本来は労働基準法によって守られるべき非常勤職員が、雇用主が独自に定めた非常勤の就業ルールに縛られ、労働トラブルに悩むケースがしばしばあります。
特に、公立学校で働く非常勤講師に関しては、未払い残業代の問題が全国で多発しています。

次章より、その背景や事情を解説します。

2、なぜ公立の非常勤講師への残業代未払いが頻発するのか?

  1. (1)「給特法」の影響

    ① 公立で勤務する「常勤」の教諭や講師には、残業代が支給されない
    実は、公立の小学校、中学校、高校等で勤務する教諭や「常勤」の講師には残業代が支給されていません
    「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」に基づき、残業代は支給されず、その代わりとして月給の4%分の「教職調整額」が一律で上乗せされる仕組みになっています。

    自発性や創造性が求められる教員という仕事の特殊性から、一般の公務員と同様の時間管理はなじまないとされ、「勤務時間外」や「残業」という概念がないのです。

    ② 公立で勤務する「非常勤」の教諭や講師は、本来、残業代が支給される
    しかし給特法が適用される講師は「常勤」の講師で、「非常勤講師」には適用されません
    非常勤講師の場合、本来であれば労働基準法による残業代の規定が適用されるのですが、給特法の考え方が浸透している学校現場では、非常勤講師の残業に対する認識も低くなりがちです。

    こうした事情を背景に、公立学校の非常勤講師に対して、未払い残業代が多く発生しています。

    ③ 市区町村の非常勤職員も、残業に対する認識が薄い傾向にある
    なお、学校の非常勤講師とは少し事情が異なりますが、市区町村の非常勤事務職員も、残業代未払いが問題になりやすいとされます。もともと地方自治体の非常勤や臨時職員には「残業をさせない」ことが通例になっていて、こちらも非常勤事務職員の残業に対する認識が薄い傾向があるといえるでしょう。

  2. (2)「1コマ単位」の給与の問題

    非常勤講師は、「授業1コマ単位」で賃金額を決めてしまうため、「残業が想定されていない」という問題もあります。

    そのため、授業の時間のみを基に賃金の額が計算され、授業の準備から後片付け、生徒の相談対応など実際に行った業務に対して残業代が支払われないことが多いのです。

3、労働基準法が適用される労働者には残業代が支給される

労働基準法が適用される労働者であれば、基本的に残業代を請求することができます。
労働基準法における残業代の考え方について解説します。

労働基準法は、労働時間の上限を「1日8時間、週40時間」までとし、使用者がこれを超えて働かせた場合は、割増賃金を支払わなければならないと定めています(同法32条、37条)。この規定には、正規か非正規かの雇用形態による区別はありません

したがって、労働基準法が適用されないケースや、労働基準法の労働時間に関する規定から除外されるケースに該当しない限り、非常勤でも残業代は支払われます

4、労働基準法が適用されない労働者とは

労働基準法が適用されないのはどんなケースでしょうか。

  1. (1)会社の指揮監督下で働いていない場合

    そもそも労働基準法が適用される「労働者」とは、「職業の種類を問わず」「事業」「に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい(同法9条)、「使用される」とは、会社からの指揮監督下にあることを意味します。

    そのため、会社の社長、役員や、請負契約や業務委託契約で働いている場合は、一般的に「労働者」に該当しないため労働基準法は適用されません
    ただし、会社からの指示で長時間労働をしているなど、実質的に会社からの指揮監督下にあると認められる場合には、労働基準法の適用対象となる可能性があります。

  2. (2)特殊性がある特定の人・事業

    労働基準法が労働の特殊性等に着目して適用除外としている人・事業もあります。
    「同居の親族のみを使用する事業」、「家事使用人」、「船員」がこれに当たります(同法116条)。

  3. (3)一般職の国家公務員

    また、労働基準法以外の法律によって「一般職の国家公務員」も適用除外になっていますが、一般職の地方公務員は一部適用除外で、労働時間に関する規定は適用されます。

    公立の小学校等の教諭や常勤講師に残業代が支給されないのは、上記のとおり給特法の定めによるためですので、給特法の適用対象ではない非常勤講師には、原則どおりに残業代が支給されるべきなのです。

  4. (4)業務内容や給与形態によっては、残業代が支給されない

    ① 労働時間に関する規定の対象外になっている職業
    労働基準法41条は、事業の種類や業務の性質に基づき、労働時間に関する規定の適用除外について定めています。

    具体的には、

    • 農業・畜産・養蚕・水産業に従事する人
    • 事業の種類にかかわらず管理監督の地位にある人
    • 監視などの継続的労働に従事する人

    などは、仕事の内容や性質上、労働時間に関する規定が適用除外とされています。

    労働時間に関する規定の適用対象外になっている人は、残業代の支給対象外となります。

    ② 裁量労働制で働いている場合
    「裁量労働制」で働いているケースも、残業代が支払われないことがあります。
    裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ労使間で定めた労働時間(みなし労働時間)を働いたとして賃金を支払う制度です。
    そのため「みなし労働時間」が「1日8時間、週40時間」以下で定められていれば、それ以上の時間を働いても残業代は発生しません。

5、非常勤講師への未払い残業代の支払いが決まった事例

公立学校で働く非常勤講師が、未払い残業代を請求し、認められた事例を、ひとつ紹介します。

  1. (1)事件の内容・問題点

    名古屋市の公立中学校の非常勤講師4人は令和元年11月、所定の勤務時間を超えて働いた分の残業代が未払いになっているとして、市内の労働基準監督署(労基署)に申告をしました。
    労基署は申告に基づき立ち入り調査を実施し、令和2年2月から3月にかけて、学校に対し是正勧告や指導を行いました。

    労基署の是正勧告・指導の内容は、労働基準法15条の「労働条件の明示」違反と、労働安全衛生法66条の8の3の「労働時間把握」の違反です。

    労基署から講師には、「就業時間、休憩、休日などの労働条件が明確に示されておらず、講師らの実際の労働時間も把握されていない」とし、労働時間の適正把握、労働時間の実態調査を行い、その結果、必要な場合は残業代を支払うよう指導しました。

  2. (2)学校側の対応

    学校側は4月、勧告・指導に応じて「労働条件の明示」などの改善をしました。そして11月には、講師4人と後から参加した講師1人の計5人が申告した未払い残業代について、申告をほぼ認め、計約137万円の支払いを決めたのです。

  3. (3)事件の焦点

    この事例で焦点となったのは、契約時間外の勤務を労働時間として認めるかどうかです。
    学校側は、教員という仕事の特殊性に着目し、一般の労働者と同様の時間管理はなじまないこと、「非常勤講師から『当該時間での授業成立ができない』などの申し出はなかった」ことなどを主張したといいます。

    しかし最終的には、契約時間外の授業の準備や成績処理などの時間を労働時間であると確認し、残業代の支払いに応じました

  4. (4)学校側の再発防止策

    学校側は再発防止に向けて、学校と講師で始業時間と終業時間を確認する勤務時間確認書を作成しました。しかし、これでは不十分であるとして、タイムカードの導入などさらなる取り組みを求める声が上がっています。

6、未払いの残業代請求は、弁護士へ相談を

  1. (1)会社相手にひとりで残業代請求をするのは難しい

    未払い残業代は、原則として雇用形態にかかわらず請求することができます。
    残業が想定されていない公立学校でも、非常勤講師の未払い残業代請求が認められる可能性があります

    しかし、実際に学校や会社に請求するとなると、残業代の計算や証拠収集などの煩雑な作業、労働問題における法的な知識、学校・会社側との交渉など、法的知識のない方がひとりで行うのは困難といえるでしょう。

  2. (2)証拠集め、計算、会社との交渉など、全てを弁護士がサポート

    もし労働問題で悩んだら、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

    未払い残業代を請求するには、未払い残業代がいくらになるのか算出し、請求額を確定させなければなりません。弁護士に相談すれば、そもそも残業代が発生するのか、発生するとしてどの程度の金額になるのかの計算を一任できます。

    また、請求のためには、残業をしたことを証明する「証拠」が不可欠です。タイムカードなどのほか、パソコンのログ、学校や生徒とのメールなど、さまざまな証拠が必要になりますが、労働者の立場で集めにくいものも多いでしょう。このときも弁護士から開示請求をすることが可能です。

    学校側と交渉する際にも弁護士が間に入ることで、法律に基づいた適正な主張を行うことができます。

7、まとめ

非常勤や契約社員であっても、労働基準法による残業代の規定の適用対象であれば、正規雇用と同様に残業代を請求することができます。
ご紹介した非常勤講師の事例のように、未払い残業代請求に応じるケースは、今後も発生する可能性があるでしょう。

非常勤で未払いの残業代について悩んでいる方は、労働問題の解決実績が豊富なベリーベスト法律事務所にご相談ください。
まずは状況を丁寧にヒアリングし、お悩みの解決に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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