残業代請求の弁護士コラム

医師の残業、宿直は?年俸制の場合は?勤務医が残業代を請求する方法

2021年04月22日
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医師の残業、宿直は?年俸制の場合は?勤務医が残業代を請求する方法

とかく「高収入」と思われがちな医師ですが、病院(この記事では、診療所を含むものとします。)勤務の場合は激務で拘束時間が長く、「割に合わない」と感じる方もいらっしゃるでしょう。また、新型コロナウイルス感染拡大の長期化により経営難となり、十分な残業代が支払われないケースも懸念されます。

医師は宿直などの待機時間が長く、どこまでが労働時間として認められるのか分かりにくいのが実情です。しかし待機時間であったとしても、一定の要件を満たせば労働時間になり、残業代請求ができる場合があります。給与が「年俸制」や「固定残業制」で支払われていても、制度が想定している残業時間を超えて働けば、超過分の請求が可能です。

このコラムでは、労働時間の定義や残業代の支給ルールについて触れながら、医師の労働時間として扱われるケースを解説します。あわせて、労働基準法改正による、医師の時間外上限規制の内容も紹介します。

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目次

  1. 1、宿直に残業代は出る? 医師の労働時間として扱われる条件
    1. (1)労働時間の定義
    2. (2)労働時間に該当するかどうかの判断基準
  2. 2、研鑽の時間
    1. (1)上司の明示・黙示の指示による行う研鑽は、労働時間
    2. (2)手術・処置等の見学中に診療や診療の補助を行った時間は労働時間
  3. 3、宿直時間
    1. (1)仮眠中でも必要に応じて実作業に従事する義務がある場合は労働時間
    2. (2)許可基準に準拠した適法な宿直業務である場合、残業代が発生しないケースも
    3. (3)許可基準から逸脱した宿直業務であった場合
  4. 4、オンコール待機時間
    1. (1)個別具体的な判断が必要
    2. (2)労働時間に該当するか、判断に迷ったら
  5. 5、残業代の発生要件
    1. (1)勤務医であっても労働時間の上限は、原則「1日8時間、週40時間」
    2. (2)割増賃金が、病院側から支払われているかも確認を
  6. 6、兼業・副業で働いている医師の場合
    1. (1)労働時間の通算方法は複雑
    2. (2)ケース別にみる、残業の考え方
    3. (3)「管理モデル」による労働時間を管理する方法も
  7. 7、「年俸制」や「固定残業代制」でも、残業代は請求できる可能性がある
    1. (1)「年俸制」残業代の考え方
    2. (2)「固定残業代制」の残業代の考え方
    3. (3)未払い残業代があるときは証拠を集めて請求を
  8. 8、労働基準法の改正による「残業の上限規制」と残業代への影響
    1. (1)医師の残業は「年1860時間」が上限となる見通し
    2. (2)「年1860時間」上回る長時間労働をしている医師もいるのが現実
    3. (3)罰則を恐れた病院側が勤務記録を残さない可能性も。証拠は自分残すと安心
  9. 9、まとめ

1、宿直に残業代は出る? 医師の労働時間として扱われる条件

  1. (1)労働時間の定義

    まずは労働時間の定義について説明します。
    一般的な労働時間の考え方は、これまでの判例に基づき、厚生労働省の指針などで示されています。厚生労働省のサイトによると、

    労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる

    とされています。

  2. (2)労働時間に該当するかどうかの判断基準

    労働時間に該当するかどうかは、労働契約や就業規則で決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務付けられたものといえるか否かによって判断されます。

    使用者の指揮命令下に置かれている時間の具体例として、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では以下の3つを挙げています。


    1. 1. 業務の準備に必要な時間
      制服など着用を義務付けられた服への着替え、清掃など業務終了後の後始末に必要な時間
    2. 2. 待機時間
      指示があった場合には、すぐに仕事に取り掛かることが求められており、仕事から離れられない状態で待機している時間
    3. 3. 参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講、使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間

    上記ガイドラインからすれば、業務引き継ぎのための朝礼やなどは、労働時間として認められる可能性が高いといえます。

    次の章からは、医師であれば直面しやすい、研鑽の時間と宿直の時間、オンコール待機の時間が労働時間に該当するかを見ていきます。

2、研鑽の時間

  1. (1)上司の明示・黙示の指示による行う研鑽は、労働時間

    医師の研鑽の時間が労働時間に該当するかについては、厚生労働省による通達が出されています(令1・7・1基発0701第9号)。

    この通達によれば、上司の明示・黙示の指示による行う研鑽は、労働時間に該当しますが、一般的に、業務上必須ではなく、自由な意思に基づき、所定労働時間外に、自ら申し出て、上司の明示・黙示による指示なく行う場合には、労働時間には該当しないとされています。

    たとえば、診療ガイドラインについての勉強、新しい治療法や新薬についての勉強、自らが術者等である手術や処置等についての予習や振り返り、シミュレーターを用いた手技の練習といった研鑽は、診療の準備や診療の後処理として不可欠である場合には、労働時間に該当するとされています。

  2. (2)手術・処置等の見学中に診療や診療の補助を行った時間は労働時間

    また、手術・処置等の見学の機会を確保や症例経験を蓄積するために、見学を行うといった研鑽については、見学中に診療や診療の補助を行った時間については、労働時間になるとされ、また、診療や診療の補助を行うことが常態化している場合には、全ての見学時間が労働時間とされています。

3、宿直時間

また、宿直時間が、労働時間に該当するかは、大星ビル管理事件(最判平14・2・28民集56巻2号361頁)やビル代行事件(東京高判平17・7・20労判899号13頁)が参考になります。

  1. (1)仮眠中でも必要に応じて実作業に従事する義務がある場合は労働時間

    これらの裁判例からすれば、仮眠時間中に、一定の場所で待機し、必要に応じて実作業に従事する義務がある場合には、実作業への従事の必要性が皆無に等しいなどの事情がない限り、労働時間に該当するといえます。

    一般的に医師の宿直であれば、実作業への従事の必要性が皆無に等しいケースは多くはないでしょうから、労働時間に該当するケースが多いことが想定されます。

    たとえば、産婦人科医が当直勤務2回のうち、平均して1回は分娩に立ち会う必要があったケースでは、実作業への従事の必要性が皆無に等しいとはいえず、労働時間に該当するとされています(東京地判平29・6・30労判1166号23頁(医療法人社団E会(産科医・時間外労働)事件))。

  2. (2)許可基準に準拠した適法な宿直業務である場合、残業代が発生しないケースも

    ただし、医師の宿直については、労働時間に該当したとしても、労働基準法41条3号及び労基法施行規則23条に基づく宿直許可がされていることも少なくなく、注意が必要です。

    適法に許可を受け、許可基準に準拠した適法な宿直業務である場合には、宿直手当(深夜早朝割増賃金含む)と、宿直中に通常の労働をした場合の賃金を除き、残業代は発生しません

  3. (3)許可基準から逸脱した宿直業務であった場合

    もっとも、許可基準から逸脱した宿直業務であった場合には、不活動時間についても残業代を請求できます(前掲大阪高判平22・11・16労判1026号144頁(奈良県(医師時間外手当)事件))。
    許可基準を順守していないケースも少なくないことが予想されますので、勤務実態が許可基準に適合しているかは、弁護士などに相談しましょう。

    なお、宿直の許可基準に関しては、通達(令1・7・1基発0701第8号、昭33・2・13基発第90号、昭33・9・13発基第17号等)が参考になり、許可基準の概要は次のとおりです。

    • 宿直の許可基準の概要
    • ① 通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること
    • ② 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること
    • ③ 宿日直につくことの予定されている医師に対して支払われる1人1日平均額の3分の1以上の宿日直手当を支払うこと
    • ④ 宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とすること
    • ⑤ 宿直の場合は、夜間に十分な睡眠がとりうるものであること

4、オンコール待機時間

  1. (1)個別具体的な判断が必要

    より自由度の高い、自宅でのオンコール待機の不活動時間については、判断が分かれるでしょう。

    医師以外の自宅待機時間については、労働時間に該当しないと判断されやすい傾向でした(東京地判平20・3・27(大道工業事件)、東京地判平29・11・10労経速2339号3頁(都市再生機構事件)等)。

    しかし、医師のオンコール待機であれば、出動要請後、迅速に駆け付ける必要があるでしょうし、睡眠や飲酒、外出などはできないしょう。身心への負担や緊張は極めて大きなものと想定され、医師のオンコール待機と一般の自宅待機とは異なる配慮が必要です。

    厚生労働省の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」においても、

    • ① 呼び出しの頻度がどの程度か
    • ② 呼び出された場合にどの程度迅速に病院に到着することが義務付けられているか
    • ③ 呼び出しに備えてオンコール待機中の活動がどの程度制限されているか

    等を踏まえ、オンコール待機時間全体について、労働から離れることが保障されているかどうかによって判断するものであり、個別具体的に判断すべきとの議論がされています。

  2. (2)労働時間に該当するか、判断に迷ったら

    オンコール待機時間が労働時間に該当するかは、上記の考慮要素などを検討して判断していく必要があり、弁護士に相談されることをお勧めします。

    なお、病院の命令によることなく医師が、自主的にオンコール待機の制度を運営していたとして、労働時間該当性を認めなかった裁判例がある(大阪高判平22・11・16労判1026号144頁(奈良県(医師時間外手当)事件)等)ため、オンコール待機の命令が、病院側からなされているのかは確認する必要があります。

5、残業代の発生要件

  1. (1)勤務医であっても労働時間の上限は、原則「1日8時間、週40時間」

    労働基準法32条は、労働時間の上限を「1日8時間、週40時間」までと定めています(ただし、従業員数が、10人未満の小規模な病院では、週44時間)。
    これは勤務医であっても適用される規定です。

  2. (2)割増賃金が、病院側から支払われているかも確認を

    ① 60時間を超える時間外労働分の割増率は50%
    労働時間の考え方に基づき、労働時間に該当する時間を合計して1日8時間・週40(44)時間を超えた分については割増賃金の対象です。
    通常の割増率は25%ですが、月の時間外労働が60時間を超えた場合、60時間を超える時間外労働分の割増率については、50%となります。

    ② 病院の規模により、50%の割増率が適用されない(令和5年3月31日まで)
    ただし、50%の割増率は、令和5年3月31日までは、従業員が100人以下であるか、(出資持分のある医療法人の場合)出資の額が5000万以下である病院には適用されません(労基法138条、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律1条、同附則1条3号)。
    令和5年4月1日以降は、病院の規模に関わらず、60時間を超えた労働時間の割増率は50%となります。

    上記の割増賃金を、病院側が支払っていないとすれば違法の可能性があります。

6、兼業・副業で働いている医師の場合

  1. (1)労働時間の通算方法は複雑

    また、医師の場合、主な勤務先からの派遣による場合も含め、兼業・副業をしている方は、極めて多いでしょうが、兼業・副業の場合は、複数の病院での労働時間を通算することになります(労基法38条1項、昭23・5・14基発769号、令2・9・1基発0901第3号)。

    通達における労働時間の通算方法は複雑で、原則的ルールは、次のような内容です。

    • 労働時間の通算方法の原則的ルール
    • ① 労働時間の通算は、労働者の申告に基づいて行う。
    • ② 勤務先で、法定労働時間や、週・月の起算日が異なるときは、勤務先ごとに定められた労働時間制度を基に通算する。
    • ③ 各勤務先の所定労働時間を通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分は後から契約した勤務先の時間外労働となる。
    • ④ 所定労働時間の通算後、各勤務先の所定時間外労働を、所定時間外労働が発生した順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が時間外労働となる。
  2. (2)ケース別にみる、残業の考え方

    この原則的ルールに従うと、たとえば、次のような扱いとなります。

    事例1
    病院Aで14時から20時まで6時間勤務して医師が、新たに、病院Bで9時から12時まで3時間勤務を開始したとします(日9時間)。

    このとき、通算した所定労働時間が法定労働時間を超えるため、後から契約を締結した病院Bが、1時間分の割増賃金を支払う必要があります

    事例2
    病院Aで15時から19時まで4時間勤務して医師が、新たに、病院Bで9時から12時まで3時間勤務を開始したとします(日7時間)。

    このとき、病院Aと病院Bでそれぞれ1時間残業した場合には、後から残業をした病院Aでの残業が、割増賃金の対象となります(ただし、病院Aでの残業前に、病院Bでの残業を申告していることが前提です。)。
    反対に、病院Bは、割増のない残業代を払うことで足ります。

    時給の高い病院での残業が割増賃金の対象となった方が得ですが、勤務する順番によって、割増賃金の対象となるか否かが決まります

    事例3
    病院Aで月~金曜日まで1日7時間労働をしていた医師が、新たに、病院Bで土曜日に週4時間労働を開始したとします(週39時間)。

    このとき、毎週月曜日と土曜日にそれぞれ1時間ずつ残業をしたとしても、病院Aの起算日が日曜日や月曜日であれば、病院Aでは割増のない残業代を払うことで足り、また、病院Bの起算日が、火~土曜日であれば、病院Bでも割増のない残業代を払うことで足ります。

    起算日によって、どちらの病院からも割増賃金が支払われないということが起こり得ます
  3. (3)「管理モデル」による労働時間を管理する方法も

    また、通達によれば、上記の方法によらないでも、次に述べる「管理モデル」による労働時間を管理する方法も可能とされており、特に2020年9月以降に兼業・副業を開始した場合には、この方法による労働時間管理がなされている可能性があります。

    「管理モデル」とは
    「管理モデル」とは、兼業・副業の開始前に、先に労働契約を締結した病院Aが、病院Aでの時間外労働の上限を確定し、病院Aの労働時間の枠外で、兼業・副業を許可するという制度です。

    このとき、病院Aは、上限の範囲内で、労働時間の通算をせずに労働時間の管理を行いますが、病院Bでの労働は、病院Aで時間外労働の枠が確保されている限り、全て時間外労働として扱われ、割増賃金が支払われることとなります。

7、「年俸制」や「固定残業代制」でも、残業代は請求できる可能性がある

勤務医の場合は「年俸制」「固定残業代制」で給与が支払われているケースも少なくないでしょう。この章では、一定の残業代があらかじめ本給に含まれている場合など取り扱いについて、説明します。

  1. (1)「年俸制」残業代の考え方

    年俸制は、ボーナスなどを含む給与の総額を1年ごとに決定する給与制度です。
    総額の決め方は病院によって違いますが、年俸制であっても1日8時間・週40時間を超えた分については残業代の支払いが必要になります。

    年俸の総額に一定時間分の残業代が含まれているケースもありますが、その「一定時間」を超えて残業をした場合、病院は超過分の残業代を支払わなければなりません
    年俸制の中に含まれている残業代の額が算定できないときは、年俸制の中に残業代が含まれていない扱いとなります(最判平29・7・7集民256号31頁(医療法人康心会事件))。

  2. (2)「固定残業代制」の残業代の考え方

    固定残業代制は、一定時間分の残業代を固定残業代とし、基本給に含めて支払う方法と一定額の手当として支払う方法があります。年俸制と同様、一定時間を超えて残業した場合は超過分の残業代を請求できます

    また、基本給に含めて残業代が支払われている場合、基本給の中に含まれている残業代の額が算定できないときには、基本給の中に残業代が含まれていない扱いとなります。
    このようなケースでは、請求する残業額が多額となることが多いので、弁護士にご相談ください。

  3. (3)未払い残業代があるときは証拠を集めて請求を

    ① 未払い残業代の正確な額を把握する必要がある
    年俸制や固定残業代制の場合には、あらかじめ何時間分の残業代が含まれているのか確認し、実際の残業時間が、採用された制度が予定している残業時間よりも長いのなら、未払いの残業代を請求しましょう。

    請求するためにはまず、未払い残業代がいくらになるのか計算しなければなりません。
    残業代は基本的に「時間単価×残業時間×割増率」で計算されますが、割増率は深夜帯や法定休日などによって異なるため、いつ、何時間労働したのかを細かく把握する必要があります。

    ② 客観的な証拠を示す必要がある
    さらに請求に当たっては、「その時間に労働したこと」を客観的な証拠によって示さなければなりません
    証拠になるものとしては、出勤簿やシフト表などのほか、IDカードによる病院への入退室記録、病院との携帯電話の記録、メールなどがあります。

    ③ 証拠がそろったら病院へ請求を
    計算と証拠集めが完了したら、内容証明を用い、請求書を病院に送付しましょう。
    病院側が応じなければ、労働審判や裁判を申し立てるなどの方法に移行します。

    ④ 残業代請求の準備には手間がかかる。確実に請求したいなら弁護士へ相談を
    未払い残業代の計算や証拠集め、請求書の送付などは手間のかかる作業なので、忙しい医師がひとりでやるのは難しい面があります
    手間を省き、かつ確実に未払いの残業代を支払ってもらうには、労働問題を扱った経験が豊富な弁護士へのご相談をおすすめします。

8、労働基準法の改正による「残業の上限規制」と残業代への影響

残業時間には、労働基準法改正により、罰則付きの上限が設けられました。この上限は、一般の労働者に対しては平成31年4月から適用されています。

しかし、医師に関しては例外で、業務の特殊性も踏まえて5年間の猶予期間が設けられ、令和6年4月から上限規制が適用される予定です(労基法141条4項)。

具体的な規制内容は確定していませんが、「医師の働き方改革に関する検討会報告書」及び「医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間とりまとめ」によって、大まかな方向性が定められています。

以下、令和3年3月16日現在で予定されている医師の残業時間の上限規制について解説します。

  1. (1)医師の残業は「年1860時間」が上限となる見通し

    ① 令和6年度からの、医師の残業時間の上限規制
    令和6年度からは、医師も一般の労働者と同様に、三六協定上の時間外労働の通常の上限は、「年360時間、月45時間」となります(労基法141条1項、36条3項)。

    また、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に通常の上限時間を超えて労働をさせる必要がある場合の上限時間(特別条項による上限時間)については、一般の医師は「年960時間、月100時間」(A水準)となる見通しです。

    この960時間という年間の上限時間は、一般の労働者の720時間の年間上限規制と異なり、兼業・副業時も通算して計算される予定です。

    これを超えて働かせた場合には、病院に罰則が科されることとなります(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金:労基法141条5項、同3項)。

    ② 一部に関しては上限規制の例外が認められている
    ただ、地域医療が医師の長時間労働によって成り立っているという特殊事情や短期間で医師の養成をしなければならないという事情もあるため、一部に関しては上限規制の例外を認めています

    例外となるのは、

    • ① 地域医療を担う病院などで長時間勤務が避けられないケース(B水準)
    • ② 本業である大学病院等での残業時間は年間960時間以内であっても、地域医療体制確保のための副業を通算すると年960時間を超えて働く必要があるケース(連携B水準)
    • ③ 一定の期間集中的に技能向上のための診療を必要とするケース(C水準)

    です。
    これらのケースでは、特別条項による上限は、(兼業・副業時の場合、通算して)「年1860時間、月100時間」となる見通しです。

    例外の適用には、原則として、連続勤務時間を28時間までに制限する、9時間以上の勤務間インターバルを設けるなどの追加的健康確保措置が必要です。

    なお、国は令和17年度末をめどに、B水準、連携B水準を廃止し、C水準によって延長できる残業時間数も減少する方針です。

  2. (2)「年1860時間」上回る長時間労働をしている医師もいるのが現実

    厚生労働省の研究班の「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」(平成28年度)及び「病院勤務医の勤務実態に関する調査研究」に基づく医政局医療経営支援課の推定によると、病院勤務医の上位10%は残業時間の年平均が1904時間に上っています。

    一般労働者の残業時間の上限「年720時間」をはるかに上回る「年1860時間」の残業規制ですが、特に繁忙な現場では、それをさらに超えて働いている医師が存在するのが現実です。

  3. (3)罰則を恐れた病院側が勤務記録を残さない可能性も。証拠は自分残すと安心

    上限規制を超えた残業についても、当然残業代を請求する権利はありますが、罰則が設けられるため、上限規制を超えてしまった分を意図的に記録しないでおく病院が出ることなどが予想されます。

    そうしたトラブルに備え、医師側も自分の残業時間を記録し、残業の証拠を残しておくと安心でしょう。

    ※参考資料:厚厚生労働省医政局 医師の働き方改革について

9、まとめ

宿直やオンコール待機時間などの合計が、勤務制度で想定されている残業時間を上回る場合は、上回った分の残業代を請求できる可能性があります。
宿直許可による宿直であっても、残業代を請求できるケースは少なくないでしょう。

しかし、未払い残業代の計算や残業の証拠集めを、多忙を極める医師がひとりで行うのには限界があります

未払い残業代の請求については、労働問題の解決実績豊富なベリーベスト法律事務所にぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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