残業代請求の弁護士コラム

残業代が支払われていないなら知っておきたい!未払い残業代請求をする場合の手順

2016年01月20日
  • 労働問題
  • 手順

残業代が支払われていないなら知っておきたい!未払い残業代請求をする場合の手順

「残業したにもかかわらず、残業代を会社が支払ってくれない。残業代を会社に請求したい。」
こちらをお読みの方にはそのようにお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、残業代を請求したくても、どのようにして会社に請求したらいいのか分からない方もいらっしゃるでしょう。残業代請求はポイントさえおさえてしまえば弁護士に依頼せずに行うことも可能です。
今回は、未払い残業代を請求する場合の手順について詳細に説明していきます。ご参考になれば幸いです。

1、未払い残業代請求ができる場合とは?

そもそも残業代請求ができるのは具体的にどのような場合でしょうか。
労働者が所定の労働時間を延長して労働を行ったにもかかわらず、延長して行った労働に対して賃金が支払われていない場合には、残業代等の未払いが生じています。

具体的には、以下のような場合において残業代を請求できる可能性が高いです。

  • 所定の就業時間を超えて働いたにもかかわらず、その超えた分の残業代等が支給されない
  • 1日8時間を超えて働いたにもかかわらず、その超えた分の残業代等が支給されない
  • 1週間で40時間を超えて働いたにもかかわらず、その超えた分の残業代等が支給されない
  • 午後10時~午前5時までの間に働いたにもかかわらず、深夜労働に対する割増賃金が支給されない
  • 休日に働いたにもかかわらず、休日労働に対する割増賃金が支給されない

2、未払い残業代請求の手順は?

未払い残業代を請求するには、以下の手順を踏む必要があります。

1.証拠を揃える
2.残業代を計算する
3.会社と交渉する
4.任意での解決ができない場合には労働審判・裁判によって解決する

以下では、それぞれの手順について詳しく説明していきます。

3、民事裁判に勝訴した場合、弁護士費用は負けた方が払ってくれる?

残業代を請求しようとする場合には、どのような証拠を集めたら良いでしょうか。残業代の請求にあたっては、大きく以下の4種類の証拠が必要になります。

  1. (1)残業していたことを証明する証拠

    例えば、

    • タイムカードや毎日の勤務時間表のコピー
    • 出勤簿のコピー
    • 交通ICカード型定期の通過履歴


    などです。

  2. (2)残業代の計算にあたり必要な証拠

    例えば、

    • 雇用契約書
    • 就業規則


    などです。

  3. (3)会社が十分な給与を支払っていなかったことを証明する証拠

    全労働時間が書かれている給与明細が必要になります。

  4. (4)その他労働審判を利用する場合に必要な資料

    会社の登記簿謄本が必要になります。

4、未払い残業代請求の計算方法は?

では、未払い残業代は具体的にどのように計算するのでしょうか。
以下、勤務体系に分けて説明します。

  1. (1)通常の勤務体系の場合

    残業代等は、以下の計算式で算出することができます。

    • 「労働者の1時間当たりの賃金」×「残業時間数」×「割増率」


    それぞれの詳しい意味については以下をご参考ください。

    ①労働者の「1時間当たりの賃金」の算定
    ●日給制の場合
    日給を1日の法定労働時間数である8時間で割って算出します。

    ●月給制の場合
    基本給与を「月平均所定労働時間数」で割って、「1時間当たりの賃金」を算定します。
    なお、「月平均所定労働時間数」は下記の算定式で算出します。

    • 「月平均所定労働時間数」=(365日(うるう年の場合は366日)-1年間の休日数)×1日の所定労働時間数÷12


    ②残業時間数の計算方法
    多くの企業では、1日8時間、週40時間の労働制を採用しているところが多いと思われます。
    その場合の実際の残業時間は下記の合計となります。
    • 休憩時間を除く1日8時間を超えた労働時間
    • 休憩時間を除く週40時間を超えた労働時間(1日8時間を超えた労働時間を除く)


    なお、ここでいう「労働時間」とは、現実に労働した時間を言いますので、例えば遅刻や早退等によって労働していなかった時間はもちろんのこと、有給などによって労働しなかった時間は「労働時間」には含まれませんので注意してください。

  2. (2)年俸制の場合

    ①計算方法
    年俸制の残業代は、まず、年俸額を12で割って月額賃金を算出します。そして次に、月額賃金を1ヵ月の所定労働時間で割って時給を算出します。
    その上で、時給に時間外の割増率及び実際に働いた残業時間を掛け算して算出することになります。

    すなわち、

    • 残業代=年俸額÷12÷1ヶ月の所定労働時間×割増率×残業時間


    となります。

    ②実際の計算例
    例えば、年俸額が600万円、1ヵ月の所定労働時間が170時間の方が、1ヵ月20時間の残業を行った場合には、
    • 600万円÷12÷170時間×1.25×20時間=73,530円(1円未満切り上げ)


    となります。

  3. (3)裁量労働制の場合

    ①残業代が発生する場合
    裁量労働制の場合に残業代が発生するのは、以下の場合です。

    • みなし労働時間が8時間を超えるように設定した場合
    • 深夜時間帯に労働した場合
    • 法定休日に労働した場合


    ②裁量労働制の場合の残業代計算の注意点
    ●1日の労働時間
    裁量労働制の場合、実際に働いた時間に関係なく、事前に決めた時間働いたとみなされることになります。そして、みなし労働時間が1日8時間を超えていた場合には、その時間が残業時間となります。

    例えば、みなし労働時間が1日9時間とされていた場合、1時間分が残業時間となります。

    ●深夜時間帯の労働
    深夜勤務(22時~5時)の時間帯に働いた場合には、裁量労働制の適用はないため、この時間帯で働いた時間が残業時間となります。

    ●法定休日以外の所定休日の労働
    所定休日にも労働することはできますが、他の労働時間と合計した週の労働時間が法定労働時間である40時間を超える場合には、超えた分の時間が残業時間となります。

    ●日、祝日などの法定休日の労働
    日、祝日などの法定休日に働いた場合には、裁量労働制の適用はないため、働いた時間がそのまま残業時間となります。

  4. (4)実際の計算例

    例えば、
    月~金:9時~20時(みなし労働時間が9時間)
    土(所定休日):12時~23時
    日(法定休日):12時~22時
    時給が1,500円
    の場合で計算してみましょう。

    時間外労働時間の残業代計算
    ●月曜日から金曜日の労働
    月曜日から金曜日までは合計50時間(毎日の実労働時間は10時間)働いていることになりますが、みなし労働時間が1日につき9時間であるため、平日は毎日1時間分の時間外労働があることになります。
    月曜日から金曜日で5時間分の時間外労働があることになります。

    ●土曜日の労働
    土曜日は所定休日です。もちろん、所定休日でも労働することはできますが、他の労働時間と合計した週の労働時間が法定労働時間である40時間を超える場合には、超えた分の時間が残業時間となります。

    月曜日から金曜日までですでに40時間を超えて働いているので、土曜日の労働は全て時間外労働となります。すなわち、10時間が時間外労働になります。

    ●時間外労働の時間の計算
    以上から、本事例での時間外労働時間は、
    1500円×1.25×15時間(月曜日から金曜日まで及び土曜日の時間外労働時間)=28,125円 となります。

    深夜時間帯の残業代計算
    22時以降に働いていたのは、土曜日の1時間ですから、ここでの残業代は、

    • 1,500円×1.25×1時間=1,875円


    となります。

    法定休日の残業代計算
    法定休日である日曜日には、9時間働いていますので、ここでの残業代は、
    • 1,500円×1.35×9時間=18,225円


    となります。

  5. (5)割増率

    割増率は以下の表の通りです。

    労働の種類 賃金割増率
    時間外労働(法定労働時間を超えた場合) 25%割増
    時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)
    ※適用猶予の場合有
    ※代替休暇取得の場合は25%の割増無
    50%割増
    深夜労働
    (午後10時から午前5時までに労働した場合)
    25%割増
    休日労働(法定休日に労働した場合) 35%割増
    時間外労働(法定労働時間を超えた場合)+深夜労働 50%割増
    時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)+深夜労働 75%割増
    休日労働+深夜労働 60%割増

5、未払い残業代請求の計算方法は?

未払い残業代は以下の流れで請求することになります。

  1. (1)証拠を揃える

    3、未払い残業代請求をするために必要な証拠は?」で説明した通りです。

  2. (2)残業代を計算する

    4、未払い残業代請求の計算方法は?」で説明した通りです。

  3. (3)会社との交渉方法

    ①まずは話し合いで交渉!
    実際の残業代の金額が出たら、それをもとに残業代を任意に支払ってくれるように、会社側と話し合いましょう。コンプライアンスを重視している会社であれば、おそらくその時点で未払いの残業代を支払ってくれるはずです。

    しかし、コンプライアンスを無視しているようないわゆる「ブラック企業」の場合には、話し合いすらまともに応じてくれないことも多いです。

    ②話し合いが上手くいかないようであれば内容証明郵便を送る!
    会社側が任意の交渉に応じてくれないようであれば、今度は会社に以下の内容を記載した内容証明郵便(郵便局が通知した内容を証明してくれる郵便のことです。)を送りましょう。

    1. 相手方の会社の名前・住所
    2. あなたの名前・住所
    3. 雇用契約について
    4. 残業の事実と残業代未払いの事実について
    5. 「残業の事実と残業代未払いの事実」を証明する証拠があること
    6. 残業代の金額(場合によっては別送で残業代計算書を送ってもよいです。)
    7. 請求金額と支払い期限
    8. 支払い口座


    中小企業であまり法律に関心を持っていない会社の場合には、内容証明郵便が公的な書面の体裁を備えていることから、未払い残業代を支払わないといけないという風に思って、残業代を支払ってくれる可能性もあります。

    ただし、内容証明郵便は、法律的にはあくまで普通の書面であるために、内容証明郵便をもらい慣れてしまっている会社などは内容証明郵便を出しても支払ってくれない可能性が高いです。

    しかし、そのような場合でも、内容証明郵便を送ることで「時効の進行を止める」という効果はあります。残業代の時効は2年間で、2年前のものまでしか請求できません。そのため、時効によって請求できる残業代の金額が減ることを避ける意味で、内容証明郵便を送ることは重要です。

  4. (4)交渉が決裂してしまった場合の方法

    会社との任意の交渉で残業代を回収することができなかった場合には、以下の手続きをとって残業代の回収を図ることになります。

    ①労働審判
    労働審判とは、解雇や給料の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルをそのトラブルの実情を踏まえて、迅速適正かつ実効的に解決することを目的として、平成18年に創設された手続きのことです。

    訴訟(裁判)と同じく裁判所で行われる手続きです。期日は3回以内とされており、訴訟に比べて、早期解決が期待できる手続です。

    そして、「労働審判」は、裁判所の判断であるため、確定すれば判決と同一の効力があり、差押え(強制的に預金などの会社の財産を没収し、そこから残業代を支払ってもらうこと)をすることも可能になります。

    もっとも、審判の結果にどちらかが納得いかなかった場合に、審判に対する当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は結局、訴訟に移行することになってしまいます。

    ②訴訟
    労働審判をしても解決できなかった場合には、裁判所に民事訴訟を提起して残業代を回収することになります。

6、未払い残業代請求の計算方法は?

前述のように、残業代請求は必ずしも弁護士に依頼する必要はなく、ご自身で請求することもできます。しかし、会社側も簡単には残業代を支払いません。そのため、交渉のプロである弁護士に依頼した方が回収の可能性は上がります。

また、以下で述べるようなメリットがあるため、残業代を請求する際には、弁護士に依頼することも前向きに検討した方がよいでしょう。

  1. (1)豊富な知識・経験

    残業代の請求を弁護士に依頼した場合には、全ての対応を弁護士がご本人に代わって行います。

    弁護士は、法的知識や裁判例、過去の経験に基づいて、裁判や交渉を行う法律の専門家です。
    特に、残業代請求に強い弁護士は、同種の事件を多数扱っていますので、法律や裁判例だけではなく、労働法に関する通達にも精通しており、労働者の方に最大限有利な残業代の計算ができます。

  2. (2)時間や労力の軽減

    弁護士は、依頼者の代理人として行動しますので、ご本人が会社の社長や人事の方と直接やり取りを行う必要はなく、全ての対応を弁護士が行い、依頼者には、弁護士から経過報告を行うことになります。そのため、時間や労力だけではなく、精神的な負担も大幅に軽減することができます。

  3. (3)専門知識が必要な手続きの一任

    前述のように、残業代請求はご自身でもできます。しかし、会社側が任意に応じず、それでも残業代を回収したい場合には、労働審判や裁判をして回収する必要があります。

    しかし、労働審判や裁判をして回収する場合には、高度に専門知識が要求されてくるため、法的知識のない一般の方々にとっては、ご自身のみで行うのは非常に困難が伴います。
    この点、弁護士は法律の専門家であり、労働分野に精通している弁護士に依頼すれば、専門的な知識が要求される手続きを全て任せることができます。

    また、最終的に裁判で残業代を回収しようとした場合、弁護士は、裁判の場でも代理人として活動できる権限があります。そのため、残業代の支払いに応じない会社や、金額の面で折り合いがつかない場合には、裁判を起こして、残業代を回収することができます。

  4. (4)相手への心理的プレッシャー

    本人が請求するよりも、弁護士に依頼して請求した方が、会社側が「最終的に裁判になると困る」と思い、案外あっさり要求に応じるケースが少なくありません。
    この点も、弁護士に依頼するメリットといえるでしょう。

7、未払い残業代請求を弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用はどれくらい?

  1. (1)弁護士費用の種類

    以前は弁護士報酬は一律に決められていましたが、現在では弁護士の料金体系は自由に決めることができるようになっているので、法律事務所によって弁護士費用の金額は様々です。
    弁護士に依頼した場合には、下記の種類の費用がかかります。

    ①相談料
    弁護士に相談する際にかかる費用のことです。

    ②着手金
    弁護士に案件を依頼する際(委任契約時)に支払う費用のことです。

    ③報酬金(成功報酬)
    案件終了後に、その具体的な成果に応じて支払う費用のことです。
    この報酬金は、裁判で全部棄却判決を受けた場合など、全く残業代を回収できなかったような場合には、原則として発生しないことになっています。

    なお、残業代請求事件の解決方法には、以下の通り交渉、労働審判、裁判という手段があります。以下、それぞれの手段についてどのような場合に利用されるかについて書いていきますので参考にしてください。

    • 交渉段階
    まず、実際に弁護士が残業代を計算します。そして、その計算に基づいて、会社側に対して残業代を請求し、任意に支払うように請求します。


    • 労働審判の申立て
    会社側が任意の支払いに応じない場合には、労働審判を申立てます。


    • 裁判
    労働審判でも残業代を回収できない場合には、裁判を起こして、残業代を請求することになります。

  2. (2)弁護士費用の相場

    先程もご説明したように、現在は弁護士の料金体系は自由化されているため、法律事務所によって弁護士費用の金額は様々です。そのため、正確な金額を示すことは難しいですが、おおまかには以下の通りです。

    ①相談料
    通常、1時間1万円(税別)が相場ですが、当事務所を含め、初回相談無料で対応している法律事務所が増えているようです。
    また、法律事務所によっては、労働問題に関する相談は何度でも無料というところもありますので、一度ご相談される法律事務所に確認してみると良いでしょう。

    ②着手金
    着手金の金額は、法律事務所よって様々で、法律事務所の中には完全成功報酬制(お金を回収できなかった場合には費用は一切発生しないシステムのことを言います。)のもとで着手金を請求しないところもあります。
    着手金の相場は、おおよそ以下の通りです。

    ●残業代の計算(計算資料の収集を含む)をした上で、会社に対して残業代の請求をし、任意の支払いを求める段階
    まずは、残業代の計算や会社に任意の支払いを請求する書面の作成及び口頭でのやり取りが主な作業になります。そのため、比較的安い金額で設定されることが多いです。
    相場としては、5万円から10万円(税抜)程度です。

    ●労働審判の申立て
    任意では納得のいく金額が回収できない場合には、労働審判の申立てに移行することになります。
    労働審判の申立ては、15万円から20万円(税抜)が相場となります。
    労働審判に移行した場合、裁判所が関与することになるため、法律に基づいた主張と証拠に基づいた証明が必要になります。そのため、上記の任意の支払いを求める段階で作成する書面よりも、より詳細な書面の作成や証拠の準備等が必要になりますので、やや高い金額が設定されることが多いです。

    ●裁判
    労働審判でも解決できない場合には、実際に裁判を起こして残業代を請求することになります。この段階では、30万円から35万円(税抜)が相場となります。
    上記の労働審判の場合よりも費用が高いのは、作成する書面の数や裁判所へ出頭する回数が多くなるためです。

    なお、詳しくは、ご相談される法律事務所に確認してみると良いでしょう。

    ③報酬金(成功報酬)
    報酬金の相場は、実際に回収できた金額の20%から30%(税抜)程度となります。
    そして、任意の支払いを求める段階、労働審判の申立ての段階、裁判の段階のいずれの段階で回収できても、金額が変わらないのが通常です。
    なお、報酬金も着手金と同様、法律事務所によって料金体系が様々ですので、ご相談される法律事務所に一度確認してみると良いでしょう。

    ④実費
    例えば、内容証明郵便を作成・送付した場合には、上記以外に実費がかかることがあります。ただし、法律事務所によっては、実費がかからないところもあるようなので、やはりご相談される法律事務所に一度確認してみると良いでしょう。

8、未払い残業代はいつまでに請求しなければならない?残業代の時効について

未払い残業代が発生していても、残業代請求には時効があるため、いつまででも請求することがきるわけではありません。具体的には、労働基準法によって、2年と定められています。

そのため、例えば、平成25年11月25日に支払われるはずだった残業代の請求権は、平成27年11月25日には時効によって消滅することになります。この点は注意してください。
なお、未払い残業代を請求する場合、在籍の有無は関係ないため、退職後であっても、残業代請求はできます。

まとめ

今回は未払い残業代を請求する場合の手順について説明してきましたがいかがだったでしょうか。もし未払い残業代がある場合には、今回の話を参考に、ご自身でまたは弁護士に依頼することによって未払い残業代を請求してもらえれば幸いです。

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