残業代請求の弁護士コラム

みなし残業手当があっても残業代がもらえる場合とは?

2015年12月16日
  • 労働問題
  • みなし残業

みなし残業手当があっても残業代がもらえる場合とは?

求人広告などの給与欄の中で「みなし残業手当」という言葉を目にされたことはあるのではないでしょうか。このみなし残業手当を労働条件に採用している会社は徐々に増えつつあります。
みなし残業手当は、残業時間が少なかったとしても毎月支払ってもらえるため、労働者にはメリットもあります。では、みなし残業手当が予定している時間以上に残業した場合にも、別途残業代をもらうことはできるのでしょうか。
今回は、みなし残業手当以外に残業代がもらえる場合について説明していきます。ご参考になれば幸いです。

1、そもそもみなし残業手当とは?

そもそもみなし残業手当とは、手当ての中に、 例えば「月20時間の残業を含む」などとされていて、月20時間までの残業代は、実際にその時間残業していなくても支払われるものをいいます。文字通り、決めた時間残業したと「みなされる」こととなります。
上記の例であれば20時間残業したとみなされます。
なお、みなし残業手当は、固定残業代や定額残業代と言われることもあります。

2、みなし残業手当が適法となる場合の条件は?

本来ならば、1日8時間、1週間40時間を超えて働いた場合には、残業代を請求することができます。

しかし、上述したように、例えば「月20時間の残業を含む」としてみなし残業手当が支払われていた場合には、実際の残業時間が決めた時間を超えない限り、この手当てとは別に残業代が支払われることはありません。

では、残業代を支払わなくて済むみなし残業手当はどのような場合に適法となるのでしょうか。

  1. (1)基本給部分と残業代の部分が明確に区別されている

    まず、通常の労働時間の賃金にあたる基本給部分と時間外の割増賃金にあたる部分が明確に区別されていることが必要です。
    これは、固定・定額部分が妥当な金額なのかどうかを判断するためです。

  2. (2)みなし残業手当が労働者に明示されている

    みなし残業手当も労働条件ですので、みなし残業手当が労働条件になることをあらかじめ

    • 就業規則に記載されて知らされているか
    • 個別の労働契約に明記されていること


    が必要です。

3、みなし残業手当をもらっていても残業代請求できる?

では、みなし残業手当をもらっていても別途残業代を請求することができるのでしょうか。
これは、みなし残業手当が想定している残業時間を超えて働いたかどうかで、別途残業代をもらえるかどうかが異なります。

みなし残業手当が、例えば「月20時間の残業を含む」とされている場合、月の残業時間が20時間以内の場合にはみなし残業手当以外に残業代を会社に請求することはできません。
反対に、20時間を超えた場合、例えば、21時間ならば1時間分、35時間であれば15時間分の残業代を別途会社に請求することができます。

4、残業代請求の方法は?

残業代は以下の流れで請求することになります。

  1. (1)証拠を揃える

    残業代を請求しようとする場合には、どのような証拠を集めたら良いでしょうか。
    残業代の請求にあたっては、大きく分けて以下の4種類の証拠が必要になります。

    ①残業していたことを証明する証拠
    例えば、

    • タイムカードや毎日の勤務時間表のコピー
    • 出勤簿のコピー
    • 交通ICカード型定期の通過履歴


    などです。

    ②残業していたことを証明する証拠
    例えば、
    • 雇用契約書
    • 就業規則


    などです。

    ③会社が十分な給与を支払っていなかったことを証明する証拠
    全労時間が書かれている給与明細が必要になります。

    ④その他労働審判を利用する場合に必要な資料
    会社の登記簿謄本が必要になります。

  2. (2)残業代を計算する

    残業代等は、以下の計算式で算出することができます。

    • 「労働者の1時間当たりの賃金」×「残業時間数」×「割増率」


    それぞれの詳しい意味については以下をご参考ください。

    ①労働者の「1時間当たりの賃金」の算定
    ・日給制の場合
    日給を1日の法定労働時間数である8時間で割って算出します。

    ・月給制の場合
    基本給与を「月平均所定労働時間数」で割って、「1時間当たりの賃金」を算定します。

    なお、「月平均所定労働時間数」は下記の算定式で算出します。
    • 「月平均所定労働時間数」=(365日(うるう年の場合は366日)-1年間の休日数)×1日の所定労働時間数÷12


    ②残業時間数の計算方法
    多くの企業では、1日8時間、週40時間の労働制を採用しているところが多いと思われます。
    その場合の実際の残業時間は、
    • 休憩時間を除く1日8時間を超えた労働時間
    • 休憩時間を除く週40時間を超えた労働時間(1日8時間を超えた労働時間を除く)


    の合計となります。

    なお、ここでいう「労働時間」とは、現実に労働した時間を言いますので、例えば遅刻や早退等によって労働していなかった時間はもちろんのこと、有給などによって労働しなかった時間は「労働時間」には含まれませんので注意してください。

    ③みなし残業手当に含まれている残業時間以上残業した場合の残業代の計算方法
    例えば、残業手当が月20時間分の手当てを含んでいた場合で、かつ時給が上記計算式にあてはめて計算した結果が1,500円だったとします。

    この場合で、残業時間が合計で30時間だった場合には、
    • 10時間(実際の残業時間から残業手当に含まれている残業時間を引いた時間)×1,500円×125%(割増率)=18,750円


    すなわち、18,750円がみなし残業手当以外に別途残業代を請求できる金額になります。

    ④割増率
    割増率は以下の表の通りです。

    労働の種類 賃金割増率
    時間外労働(法定労働時間を超えた場合) 25%割増
    時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)
    ※適用猶予の場合有
    ※代替休暇取得の場合は25%の割増無
    50%割増
    深夜労働
    (午後10時から午前5時までに労働した場合)
    25%割増
    休日労働(法定休日に労働した場合) 35%割増
    時間外労働(法定労働時間を超えた場合)+深夜労働 50%割増
    時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)+深夜労働 75%割増
    休日労働+深夜労働 60%割増

  3. (3)会社との交渉方法

    ①まずは話し合いで交渉!
    実際の残業代の金額が出たら、それをもとに残業代を任意に支払ってくれるように、会社側と話し合いましょう。
    コンプライアンスを重視している会社であれば、おそらくその時点で未払いの残業代を支払ってくれるはずです。
    しかし、コンプライアンスを無視しているようないわゆる「ブラック企業」の場合には、話し合いすらまともに応じてくれないことも多いです。

    ②話し合いが上手くいかないようであれば内容証明郵便を送る!
    会社側が任意の交渉に応じてくれないようであれば、今度は会社に以下の内容を記載した内容証明郵便(郵便局が通知した内容を証明してくれる郵便のことです。)を送りましょう。

    1. 相手方の会社の名前・住所
    2. あなたの名前・住所
    3. 雇用契約について
    4. 残業の事実と残業代未払いの事実について
    5. 「残業の事実と残業代未払いの事実」を証明する証拠があること
    6. 残業代の金額(場合によっては別送で残業代計算書を送ってもよいです。)
    7. 請求金額と支払い期限
    8. 支払い口座


    中小企業であまり法律に関心を持っていない会社の場合には、内容証明郵便が公的な書面の体裁を備えていることから、未払い残業代を支払わないといけないという風に思って、残業代を支払ってくれる可能性もあります。

    ただし内容証明郵便は、法律的にはあくまで普通の書面であるために、内容証明郵便をもらい慣れてしまっている会社などは内容証明郵便を出しても支払ってくれない可能性が高いです。

    しかしそのような場合でも、内容証明郵便を送ることで「時効の進行を止める」という効果はあります。残業代の時効は2年間で、2年前のものまでしか請求できません。そのため、時効によって請求できる残業代の金額が減ることを避ける意味で、内容証明郵便を送ることは重要です。

    なお、弁護士に依頼することで、内容証明郵便の送付により残業代を回収できる可能性は高まります。

  4. (4)交渉が決裂してしまった場合の方法

    会社との任意の交渉で残業代を回収することができなかった場合には、以下の手続きをとって残業代の回収を図ることになります。

    ①労働審判
    労働審判とは、解雇や給料の不払いなど事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルをそのトラブルの実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的として、平成18年に創設された手続きのことです。
    訴訟(裁判)と同じく裁判所で行われる手続きです。期日は3回以内とされており、訴訟に比べて、早期解決が期待できる手続きです。
    そして「労働審判」は、裁判所の判断であるため、確定すれば判決と同一の効力があり、差押え(強制的に会社の財産を没収し、そこから残業代を支払ってもらうこと)も可能になります。

    もっとも、審判の結果にどちらかが納得いかなかった場合、審判に対する当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は結局、訴訟に移行することになってしまいます。

    ②訴訟
    労働審判をしても解決できなかった場合には、裁判所に民事訴訟を提起して残業代を回収することになります。

まとめ

今回はみなし残業手当以外に残業代がもらえる場合について説明してきましたがいかがだったでしょうか。みなし残業手当以外に残業代がもらえる場合について知りたい方の参考になれば幸いです。

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