近年、給与の支払い方法として導入されるケースが増えているのが「年俸制」です。この記事を読んで下さっている方のなかにも「年俸制」のもとで働かれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この年俸制は、成果主義を最も強く反映できる給与体系という意味で、近年多くの企業で導入されてきています。
しかし、この年俸制の導入に伴って近年増えているのが残業代の未払いの問題です。企業側は、この年俸制を理由に、残業代を支給しないことも少なくありません。
実際、「自分は年俸制だから残業代をもらえないのでは?」と思われている方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、年俸制を賃金体系としている場合でも通常の月給制の場合と同様に残業代が発生するのか、などについて説明していきたいと思います。ご参考になれば幸いです。
冒頭でもお話したように、近年給与の支払い方として「年俸制」が導入されるケースが増えています。
では、年俸制の場合には、残業代は発生しないのでしょうか。
年俸制を採用していて、残業代を支給しない会社の言い分としては、「うちは年俸制だから、一年間の給与は決まっている。だから、別途残業代を支払う必要はない。」というものがあります。
しかし、年俸制であっても残業代をもらうことができます。
法定労働時間を超えるようであれば、それは残業時間です。
会社側は「年俸制だから」という理由で残業代の支払いを拒否することはできないのです。
では、年俸制の場合、残業代はどのように計算するのでしょうか。
年俸制の残業代は、まず、年俸額を12で割って月額賃金を算出します。
そして次に、月額賃金を1ヵ月の所定労働時間で割って時給を算出します。
その上で、時給に時間外の割増率及び実際に働いた残業時間を掛け算して算出することになります。
すなわち、
では、実際に(1)の計算式をもとにして、具体的に残業代を計算してみましょう。
例)年俸額が600万円、1ヵ月の所定労働時間が170時間の方が、1ヵ月20時間の残業を行った場合
残業代を請求しようとする場合には、どのような証拠を集めたら良いでしょうか。
残業代の請求にあたっては、大きく分けて以下のような証拠が必要になります。
①残業していたことを証明する証拠
●タイムカードや毎日の勤務時間表のコピー
●出勤簿のコピー
●交通ICカード型定期の通過履歴
など
②残業代の計算にあたり必要な証拠
●雇用契約書
●就業規則
など
③会社が十分な給与を支払っていなかったことを証明する証拠
全労時間が書かれている給与明細が必要になります。
④その他労働審判を利用する場合に必要な資料
会社の登記簿謄本が必要になります。
もし、残業代を計算して、残業代が発生していた場合には、実際に会社に対して未払い残業代を請求することになります。
実際の残業代の金額が出たら、それをもとに残業代を会社が自主的に支払ってくれるよう、会社側と話し合いましょう。
コンプライアンスを重視している会社であれば、おそらくその時点で未払いの残業代を支払ってくれるはずです。
しかし、コンプライアンスを無視しているような、いわゆる「ブラック企業」の場合には、話し合いすらまともに応じてくれないことも多いです。
会社側が残業代を自主的に支払ってくれないようであれば、今度は会社に以下の内容を記載した内容証明郵便(郵便局が通知した内容を証明してくれる郵便のことです。)を送りましょう。
労働審判とは、解雇や給料の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルをそのトラブルの実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的として、平成18年に創設された手続きのことです。
訴訟(裁判)と同じく裁判所で行われる手続きです。期日は3回以内とされており、訴訟に比べて、早期解決が期待できます。
そして、「労働審判」は、裁判所の判断なので、確定すれば判決と同一の効力があり、差押え(強制的に会社の財産を没収し、そこから残業代を支払ってもらうこと)をすることも可能になります。
もっとも、審判の結果にどちらかが納得いかなかった場合に、審判に対する当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は結局、訴訟に移行することになってしまいます。
労働審判をしても解決できなかった場合には、裁判所に民事訴訟を提起して、残業代を回収することになります。
いわゆる「労働裁判」ですので、事案によっては解決までに半年~1年以上かかるケースもあり、長期戦となります。
法的な専門知識も必要になりますので、法的知識に乏しい一般の方が自分ひとりで対処するのは非常に困難です。必ず、労働問題に詳しい弁護士に依頼することをお勧めします。
今回は、年俸制でも残業代をもらえるかについて説明してきましたがいかがだったでしょうか。
繰り返しになりますが、年俸制の場合でも、残業をすれば当然に残業代をもらうことができます。
今回の話が、年俸制の場合でも残業代がもらえるのかどうか悩まれている方のご参考になれば幸いです。
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