残業代請求の弁護士コラム

残業代の定義とは?未払い賃金があるなら知っておくべき労働時間の基礎知識

2019年11月15日
  • 労働問題
  • 定義
  • 未払い賃金
  • 労働時間
  • 基礎知識

残業代の定義とは?未払い賃金があるなら知っておくべき労働時間の基礎知識

厚生労働省が公表した「監督指導による賃金不払残業の是正結果」によると、平成29年度に全国の企業が未払いにしていた残業代の中で、是正勧告や指導により支払われたものの合計は、446億円以上にものぼります。是正勧告や指導の対象となっていないものも含めれば、多くの労働者が賃金の未払い問題に遭遇していることは、想像に難くないでしょう。

勤務先から支払われていない賃金があり、請求を検討されている方もいらっしゃるはずです。しかし、そもそも労働時間(残業時間)の定義が分からず、実際の請求額を計算できないといったこともあるでしょう。

そこで今回は、具体的な事例を踏まえながら、残業の定義について解説します。

1、まずは知っておきたい労働時間(残業時間)の定義

未払いの賃金を請求するには、どこから残業時間になるのか、あるいは通勤時間や移動時間はどうなるのかなど、労働時間の正確な定義に知っておく必要があります。

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれた時間を指します。
労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかどうかは、客観的に判断されるものであり、就業規則や労働契約、労働協約の内容を問いません。三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月9日・最高裁判所第一小法廷)と呼ばれる有名な判例で示されています。

そして、労働時間には、「法定労働時間」「所定労働時間」の2つが存在します。

法定労働時間とは
1日8時間、1週40時間の労働時間をいいます。
労働基準法第32条で明文化されており、使用者は原則としてこれを超えて働かせることができません。


所定労働時間とは
会社が就業規則などで自由に定めることのできる労働時間です。
7時間や7.5時間など所定労働時間は、会社によってさまざまです。


いわゆる残業代(労働基準法第37条における割増賃金)の支給対象となるのは、法定労働時間を超えて働いた時間です。これを法定外残業と呼ぶことがあります。

一方、所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない残業は、法定内残業と呼ばれ、会社は、所定労働時間を超えた時間分の賃金を支払う必要はありますが、労働基準法上、割増賃金まで支払う義務はありません。

たとえば、所定労働時間が7時間の会社において、1時間残業した場合、会社は1時間分の賃金を支払う必要はありますが、法定労働時間の8時間を超えていませんので、労働基準法上、割増して支払う必要はありません。
一方、同じ会社で2時間残業した場合、労働基準法上、会社は1時間分の賃金と1時間分の割増賃金を支払う必要があります。

もっとも、会社の就業規則等で、所定労働時間を超える部分の労働時間について割増賃金が発生する規定があれば、会社は割増賃金を支払わなければなりません。
会社が割増賃金を支払っていない場合には、労働者は、未払賃金として請求することができます。

2、労働時間にあたると考えられる事例

  1. (1)手待ち時間

    休憩時間中の電話番や作業と作業の間の待ち時間など、いわゆる「手待ち時間」は労働時間にあたります。
    日本貨物鉄道事件(平成10年6月12日・東京地方裁判所)では、手待ち時間について、場所的に拘束されるなど使用者の指揮命令のもと継続的に労務を提供しており、また使用者は労働者を待機させることによって労働力を確保しているのだから、労働時間にあたると示されました。

  2. (2)仮眠時間

    警備会社や医療機関などで与えられる仮眠時間については、その間に業務が生じる可能性がある場合には労働時間とみなされます。
    大星ビル管理事件(平成14年2月28日・最高裁判所第一小法廷)では、警備員らが仮眠時間における待機および警報や電話が鳴ったときの対応を義務づけられており、労働から解放されていないため、労働時間にあたると判断されました。

  3. (3)社員研修、社員旅行

    社員研修や社員旅行など、会社からの指示によるものは、労働時間にあたります。
    NTT西日本ほか(全社員販売等)事件(平成22年年4月23日・大阪地方裁判所)では、全社員販売やWeb学習の時間について労働時間性が肯定されました。任意という名目ではあったものの、ノルマや上司によるスキルアップの指示があったことなど、業務と密接に関わりがあったからです。

  4. (4)着替えや準備時間

    制服や作業服へ着替える時間や業務の準備時間は、特段の事情がない限り、労働時間に含まれます。
    三菱重工業長崎造船所事件でも、作業服への着替えや保護具の着脱、副資材の受け出し、散水作業時間などが労働時間にあたるとされました。

  5. (5)黙認された残業

    休日出勤や持ち帰り残業などが黙認されているケースでは、明確な指示がなかった場合でも、労働時間とみなされる可能性が高いです。
    ほるぷみなし労働事件(平成9年8月1日・東京地方裁判所)では、土曜日の出勤について、タイムカードによる管理があり、会社が業務の事実を認識していながら中止命令を出さなかったことなどから、黙示の指示による出勤があったとされました。

  6. (6)会社事務所等に立ち寄った後に顧客先や現場に向かうための移動時間

    通常であれば、自宅から勤務先までの移動時間は、労働時間に当たりません。
    もっとも、会社事務所等に立ち寄った後に、顧客先や現場に向かうように使用者から指示を受け、会社事務所等への立ち寄りを余儀なくされていた場合には、会社事務所から顧客先や現場に向かう時間は労働時間に当たる可能性があります。
    総設事件(平成20年2月22日・東京地方裁判所)でも、事務所に出勤後に親方らと組になって現場に赴き、作業終了後も一度事務所に戻ることが原則化していることなどから、移動時間が労働時間にあたるとされました。

3、労働時間にあたらないと考えられる事例

  1. (1)通勤時間

    通勤時間は、労働者が使用者からの指示を受けずに自由に過ごすことができることから、労働時間には該当しません。直行直帰や出張の移動時間、休日に前乗りしたケースなども同様です。

    たとえば、移動中に物品の監視を指示されている場合のように、移動そのものに業務性が認められない限りは、原則として自由な時間であると解されます。
    高栄建設事件(平成10年11月16日・東京地方裁判所)では、会社の寮から作業場である工事現場までの往復時間については、通勤の延長ないし拘束時間中の自由時間と呼べるものであるから、賃金を発生させる労働時間ではないと判断されました。

  2. (2)自由参加の研修

    業務と直接関係のない研修への参加や、業務と関連する研修であっても任意の参加による場合には、労働時間にあたらない可能性が高いです。
    行政解釈でも、使用者が実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならないとされています。

    もっとも、実質上は強制参加だと認められると労働時間にあたる場合があります。

  3. (3)接待ゴルフや飲み会

    休日に取引先の人とゴルフをするいわゆる接待ゴルフも、原則として労働時間には該当しません。
    大前提として、ゴルフはそのプレーを楽しむものであり、レジャーとしての要素が強く、使用者の指揮命令下に置かれているとは言い難いからです。懇親会や飲み会なども同じように考えられます。

    ただし、準備進行係を任されている場合、商談がともなう場合、参加の有無が人事考課の対象となる場合など、労働時間にあたると解釈されるケースもあります。

4、労働時間(残業時間)について弁護士に相談すべき理由

ご自身が直面している未払い賃金の問題に関して、判断に迷うことがあれば弁護士に相談するべきです。

  1. (1)会社組織を相手に1人で戦うのは困難

    労働時間の定義である「使用者の指揮命令下に置かれる時間」について、会社からの業務命令があったのか、従業員による自主的なものだったのかなど、実態を見極めたうえでなければ判断できないからです。
    また、法律の知識や、ここまでご紹介したような多数の事例をひもときながら、労働時間性の判断や正しい残業代の計算を行うことは、一般の方には難しいことでもあります。

    仮に正しい計算で請求額を導きだせたとしても、実際に請求するには会社との交渉が必要です。どんなに交渉力に自信のある方でも、会社組織を相手に1人で対峙(たいじ)することは容易ではありません。
    通常、会社には顧問弁護士がいますので、顧問弁護士に法的な主張がされれば、ご自身のみで対処していくことは、難しくなるでしょう。

    場合によっては、会社にご自身が集めようとしている証拠を隠ぺいされる、職場内での立場を不当に変更させられるなど、不利益な扱いを受けてしまうおそれもあります。

  2. (2)弁護士に依頼するメリット

    弁護士であれば、法律の知識や事例の解釈にもとづき、法的に正しい主張を行うことができます。必要な証拠についても事前に相談することで、未払い残業代を証明する際に効果的な証拠を集めることにつながります。

    万が一、職場で不利益な扱いを受けた場合にも法的に対抗し、労働審判や裁判になった場合にもあなたの代理人となり、最後までサポートできるのも弁護士だけです。

5、まとめ

今回は労働時間(残業時間)の定義について、複数の事例を交えながら解説しました。
本来は労働時間にあたるにもかかわらず賃金が支払われていないのであれば、ご自身には賃金を請求できる正当な権利があります。
とはいえ、労働時間について不明な点がある、計算方法が分からない、交渉が不安といった場合もあるでしょう。

そのときは、まずは弁護士へ相談されることが良策です。弁護士が正しい知識にもとづく効果的な交渉を行うことで、無事に請求が認められるケースは多くあります。

未払い賃金の請求をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所へご連絡ください。
労働問題の解決実績が豊富な弁護士が、最適な解決策をご提案いたします。

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